医療と人工知能について

2018年10月15日

先日 わたくしは、日本消化器病学会、日本消化器内内視鏡学会の合同北海道支部例会(=通称名:地方会)に出席致しました。その地方会のランチョンセミナーにて、講師からお聞きした話題を一つ、この場で提供致します。
今年2月より某社から既に販売が開始されている新型内視鏡、大腸カメラのお話です。

特殊機能を備えた最新鋭の内視鏡なのですが、大腸カメラの検査とは、一旦、深部大腸、すなわち盲腸まで挿入したカメラを徐々に抜去をしながら、大腸粘膜面を観察し、ポリープやがんなどの病変が隠れていないか、目視確認をしていく検査です。

検査中に、もし気になる怪しい(紛らわしい)病変があれば、必要に応じて生検鉗子という小道具を用いてその病変の「一部」をつまんで切り取り標本を採取し、顕微鏡判定を専門に行っている病理センターへその検体を送り出し詳細に調べてもらうという手順が大腸カメラの標準と成っています。
その病理学的検査の工程としては、標本をフォルマリン固定し薄く切片を作り様々な染色液で色を染め仕上がったプレパラートを顕微鏡で拡大観察して細胞の悪性度判定を行います。病変ががんなのか、癌でない(=前がん病変や炎症)のかを確認していく訳です。

ところが、その新内視鏡では なんと人工知能が搭載されておりまして 病変がありますと自動でそれを検出し警告音と画像上の矢印で、「ここにポリープ( or 陥凹型病変)があります。」と音と映像で検査担当者に(複数病変があれば繰り返し何度でも)教えてくれるのです。(機能1:病変の検出) つまり初心者の内視鏡医師でも挿入さえ出来れば、ほぼ見逃しなく観察ができるという夢のような代物なのです。

しかも、その新大腸カメラは、拡大内視鏡機能、顕微鏡相当の機能を持っており、標準で500倍拡大、最大で1000倍までの拡大が可能なのです。また、色素をカメラ担当医が病変表面に散布せねばならないのですが、染め上がる時間をしばし待って、スイッチを押して病変を拡大観察しますと、自動でその病変が がんなのか、がんでないのかを高精度でかつ短時間で自動判定してくれるのです。(機能2:病変の悪性度評価)

こうした工程が一病変当たり2分前後かかるそうですが、通常の病理センターへ検体を提出する場合(現在の通常手順・標準工程では最終的病理判定結果が戻るまで平均7日かかります。新大腸カメラではその場で2分余りで結果が出るという優れものでなのす。

しかも拡大内視鏡でのピットパターン分析によって病変の悪性度判定のみならず、それが浅い病変なのか深い病変なのかまで評価可能なのです。つまり、病変が内視鏡的に粘膜切除術が可能なものなのか否か迄自動評価可能なのです。(機能3:深達度診断)

もちろん、当面はこうした機能はあくまでも補助であり検査の主体は医師であり人間でしょう。

尚、西欧で現在進行中の大腸内視鏡自動深部挿入機能の研究が終了・完成される日が来た場合には、上記の自動判定機能とそれがハイブリッドされ現場に提供される時が来るのかもしれないと勝手ながら私は想像をしている処です。

以上のことより推測できることですが、最近の将棋や囲碁のソフトのように、AIが人間の能力をほぼ完全に凌駕する性能に到達する時代が数年後訪れるのかもしれません。それも大腸内視鏡検査のみに限らず、画像診断や恐らくは臨床診断の領域にも及ぶことでしょう。

 

聴診のお話

2018年07月17日

本日は、聴診について少し、私の個人的印象のお話を致します。

私が巡回健診に定期的に赴いていた6年余り前のお話です。
巡回先の道東で、とある高齢の受診者から、とある嘆きの言葉を聴診を終えた後で聞きました。「最近のお医者さんは病院受診しても全くと言っていい程聴診器を当ててくれない。物足りないし、寂しいものですね。」というお話でした。

最近の病院の医師は受診者なり患者さんにほとんど胸の音も聞かないし、腹部も触らない。触れないでパソコンのモニター画面ばかりを観て診察をしているというのです。
確かに最近は血液データ、CT検査、MRI検査や内視鏡検査ばかりに重きを置いて、内科医師は診察をしているようです。目と目を合わせて聴打診、診察というのは最近は減っているようなのです。

しかし、私の場合は毎日が理学的所見であり、診察が日常業務そのものです。立場上、様々な受診者に相対することもままありますので、込み入った話をせざるえない。時には、とりわけ丁寧に時間をかけて診察をしてから話を展開するようにしています。その方が、私の話も受診者がより真摯に聞いてくれる印象ですから。

ただ、医師側の都合を言うと、極めて様々な所見の方が実際はおりますので、聴診=音を聞くことも、触診・打診=おなかに触れてしこりや痛みがないかをみることも、1~2年で習得できるほど簡単な技術ではない訳です。
良質なテキストはありませんので、数字や画像で評価できるものより却って難しいのではないかと思われます。そうした技術は、日頃から聴診・鍛錬をしていないと知識も含めてすぐさま消え去ります。医師に成りたてでは経験不足ゆえに尚のこと利用しないでしょう。

別件の話ですが、最近の内科医師は、胸のレントゲン写真はまあ読めるのですが、バリウムがとんとさっぱりという方が多いようです。ただ、若い医師は単純写真よりはCTの方が良いと思っていると推測できます。

しかしながら広い世界の中には病院さえも全くないような地域が多々あります。医療過疎の地域では、聴診打診はいまだに必須の技術です。日本は恵まれているくらいです。CTの台数が多すぎて読影できる放射線科医師が不足しているということが大きな問題に現在なっているくらいですので。

でも、実は受診者の側も、その高齢の方と同じ感想なり印象を全員が持っているというわけでもありません。受診者の方には CTやMRIの時代に、時代遅れの聴診器なんぞ、という印象を持っておられる方もおられるようです。

聴診器一本あれば、訴え=話をよく聞いた上で、目で診て(視診と言います)、触って診て(触診と言います)、聴診器で音を聞いて(聴診ですね)、指を当てて打つ音を聞く(打診ですね、スイカの実入りをみるあれです)と概ね、診断の方向は自ずと決まることが多いのです。年齢、性別、想定される疾患の年齢別頻度、重症度、緊急度を天秤にかけて、次に進める(勧める)検査を外来では決めていました。
聴診器の良いところはとりわけ、かかる費用が少なくて済み、いつでも、どこでも、誰でも、簡単に用いることが出来る事です。
今や、CTの出前も一部ではあり、ポータブルエコーの機器も販売されていますが、聴診器の高い機動性とカバーできる疾患の広さにおいては代用できるものがないと思えます。

但し、では医師側だけが良くないのかというと受診者も実はあまり協力的ではないのです。実際上、深呼吸ですらきちんとできない方、深呼吸=深く息を吸って吐いてと言っても、ほんの少ししか息を吸えない方がほとんどという印象です。

日頃から運動をしていないので深呼吸と言われても出来ないのかもしれません。でも深呼吸をきちんとしないと異常所見があってもその音が検出できない訳です。女性の方は、とかく、こんな診察なんか早く終わってほしいなと思われているのでしょうが、呼吸がおざなりだと、音が聞き取りにくくなり、却って診察時間が伸びやすいものです。もちろん、早く大きく呼吸をしてくれればこちらも早く次の方に移れる訳ですが、いやいやゆっくり息をされるとこちらもなかなか次の方に移れないものです。

しかしながら、深呼吸がきちんとできない受診者(ちょっと情けないのですが)でも最近大丈夫になりました。きちんと聴診できる道具が、強力な助っ人が10数年前から現れています。それが、電子聴診器、デジタル聴診器です。電池の交換が偶に必要ですが、小さな呼吸でも音を充分増幅してくれますのですごく聞きやすくなります。

聴診器を売っている側の建前上は、衣擦れの音をフィルター処理してくれますので衣服をめくらなくとも、衣服の上から聴診できるのです。但し、衣服二枚の上からや、厚手のブラジャーの上からでは何も聞こえませんので、その点は無敵ではありません。

さらにデジタル聴診器の利点としては、5秒間、胸に充てるだけで心拍数を自動で計算して表記してくれますし10秒間前後の聴診音を10個、内部保存できますし、その音源ファイルをブルートゥースでパソコンに転送できます。つまり、他の医師とも音を共有なり、確認してもらえるし永久保存もできるというわけです。ただ、アナログの音とデジタルの音の質がやはり違うので、私も慣れるまでに時間が少しかかりましたが、慣れればとても便利です。ボタンを押せば、実測2秒で起動します。

 

こうした聴診器のように便利に改良された機器などを今後も積極的に利用して受診者の利便性を提供していきたいと思っております。

 

血液検査について -採血-

2018年04月25日

今回は採血についてお話を致します。
痛い針を皮膚に挿して血液を採る、あの採血です。

採血については、それを受ける側として、余り得意ではない方、本当は嫌で受けたくはないという方が大勢いらっしゃると思いますが、健康診査のみならず、医療全般につき、採血=血液検査はかなめの検査法です。

現代医療において主要たる検査手法の双璧を成すものが一つには近年特に進化著しい画像検査(胸部X線検査、胃バリウム検査、腹部超音波検査、胃カメラ、眼底検査)であり、そして、もう一つが血液検査です。
 ご存知のように血液を調べることによって体内にて現在進行中の様々な生理現象なり病態生理(病状)なりが正確に、且つ、高い再現性を以て、定量、評価、診断できます。

調べられる具体的項目としては、栄養状態、塩分バランス、貧血の有無と程度、炎症反応、肝臓や腎臓等の内臓機能、各種ホルモンの値、などなどですが、その他にも沢山測定可能な項目がまだまだあります。
 確かに、日進月歩、日々着々と、多方面に渡って医学研究は進んでいるのですが、しかし残念ながら未だに、尿や便、唾液で血液の代用を任せられるというところまでは進んでいないようです。
 つまり多少とも痛い思いをしないことには、体内の病態生理を調べることはいまだに難しいようです。但し、皆さんが苦手な採血であっても必ずしも脅かすわけではありませんが、病院でのあまたある検査中ではまだしも負担、苦痛、苦悩の少ない方の検査に分類されると個人的には思われます。
 確かに採血検査は一応ながらも、侵襲性検査に大別、分類されてはいますが、身体的負担という点ではかなり低い方と思れています。実際に、もっともっと大変な苦しい検査や痛い処置が病院には沢山あります。

しかしながら、皆さんはやはり何と云っても、針刺しの痛みを忌避される方が多いようです。

採血担当者も、被採血者への負担を軽減できるよう、一度で、短時間の針刺しで済むように、刺しやすい血管(静脈)をこまめに捜したり、難しい方の場合には、局所を熱い蒸しタオルで温めたりして丁寧に準備をいたします。
 でもなかなか、深い皮膚脂肪、皮下脂肪に血管が完全に埋もれていて見えにくい、刺しにくいという方も結構いらっしゃいます。では、頑張って痩せたら、血管が見えやすくなるかというと私の狭い観察経験上はどうもそうでもないようです。

それと、太い針をさせば血液の流入速度も速くなるので針を刺している時間が短くなるのですが、でも太いなりにそれなりの刺入感はあります。細い針をさせば刺入時、針を刺したときの痛みが若干、わずかながら少ないのですが、血液流入時間=針を刺している時間はそれ相応に長めになる訳です。
 針をさす、その針の太さも痛みと関連していますし針の直径と針を指している時間とも逆相関があるからです。
 但し、200ml、400ml程の血液量を引き出すための献血用針や、人工透析で尿毒素を体からこし取る時に用いる針は、採血用の針の幾倍もの太さがあります。この理由は溶血現象等を予防するためですが、ですから医療を実施している側から見ますと常日頃用いている検診用の採血針は、誤解を恐れずに言えばとても細いほうで、かわいい太さです。(注:溶血現象とは、赤血球等の細胞成分が採血の際に血液にかかる陰圧・陽圧によって細胞が崩壊し、細胞内液が血液、血清や血漿に混入して正確な測定値が得られなく成ることです。)

それと、偶に聞かれる内容ですが、採血量は検査メニューしだいなので一概には表現しがたいのですが、概ね15~30ml前後です。全身の血液量はおおむね、50kg体重の方でおおよそ3.8リットルありますので、その程度の採血量で、貧血になることは全くありません。

但し、脳貧血の方はありえます。(一般の方は貧血と脳貧血を区別しないで、「ごちゃまぜ」にして使っている方が多い印象です。)
 体内で循環する血液中色素量が不足して疲れやすく息切れしやすくなるのが貧血であり、意識が短時間遠のく感じがしたり、あるいは意識が消失することが、いわゆる脳貧血です。諸々の要因にて一時的に脳血流量が乏しくなって正常な脳機能が維持できなくなる症状、病態が脳貧血です。

そこで追加説明しますが、それ程高頻度ではないのですが、採血の少し後に体調不良に成る方が経験上100人中2~3人概ねいらっしゃいます。そうした病態の発生要因は迷走神経反射という仕組みで起きるのですが、気が遠くなったり(ブラックアウト等)、短時間意識を失ったりしますし程度の強い方ですと短時間=数分間の間に数回、全身性痙攣発作を繰り返す方もいます。意識がないのにも関わらず全身を大きく波打ってびくびくと動かすことです。

ちょっと脅かしすぎたかも知れませんが、施設では年間に3.5~4万件前後採血をしていますが、けいれんまで起こす方は年間に1件あるかないかと云ったところでしょうか。
 稀な症状であるけいれんは別として、意識消失、その意識を失うという症状についても表現形態には個人差が相当あり多様なのですが、採血している最中に意識を失い失神する方もおれば、1~2分間、あるいは3~4分経過してから失神する方もおります。

ただ、一回でもそうした採血後(中)の失神発作が起きた方はその後も繰り返すことが多く転倒事故を起こしやすいものですから、採血後受診者の方には基本、安静にして頂くようにルールを決めているのはどこの健診機関もほぼ同様のことでしょう。それらは手間がかかるにせよ、意識消失による事故、トラブルを起こさないための配慮なり対処なのです。

取り分け、採血後に失神を繰り返しやすい方は、あらかじめベッド上に寝てもらって準備をしてから、採血を仰向けで受けて頂きしばらく安静に臥床して頂くという手順を取って対処しているのも同様の理由です。転倒した所、先に偶々何か障害物があると怪我をされる場合があります。意識がないまま倒れると回避も受け身も全くとれないからです。

ですから、当施設を「新規」に受診される方の中で
以前、採血後体調不良の経験があった場合には必ず担当者にその旨、自己申告をお願い致します。

 

そのような皆様からの情報提供なり、協力、そして施設側からの小さな配慮にて、より安全安心な健康診査を受診者の方達へ提供できるものとわたくしは考えております。

 

ピロリ菌(第2弾)について

2017年10月13日

 
 
 
 
 

前回の医学コラムでは、ピロリ菌について簡単な解説をさせて頂きましたが、
今回も、ピロリ菌(第2弾)について触れさせて頂きます。

健診検査の一環として、私は胃カメラを定期的に担当しているのですが、
その胃カメラを受けられた直後の受診者の方たちに
「検査結果を説明致しますが、(画像提示後)・・ご安心ください。異常所見は有りませんでした。あやしい所見は一切ありませんでしたので、心配ご無用です。」
と説明を致しますと、少なからぬ回数で受診者の側から
「実は父(母)が胃がんで手術を過去に受けましたので、それで今日、私も胃カメラ
を(・・覚悟を決めて・・)初めて受けたのです。でも、とても安心しました。」
という風に返答をされる方が案外いらっしゃいます。両親と同じ体質、遺伝子を持っているので心配でした、という意味が隠れていると思われるわけです。
 
 
しかしながら 皆さんも御存知のように、胃がん発症に大きく関与している要因は
いわゆるヘリコバクター・ピロリという細菌です。

 
幼少期に感染した後、胃粘膜内に定着・繁殖し、その後長年の持続感染を介して胃がん発症へとつながると云われています。この際の胃がん発現については、罹病する宿主側の遺伝子は左程関係はなく、むしろ病原体株の遺伝子の方が大きく関係しているようです。
 
中には、日本での胃がん発症の主たる要因たるヘリコバクター・ピロリという細菌の寄与度は98-99%近いとの報告もありますが、一方で諸外国ではその寄与比率は7割前後であるとも統計が報告されています。つまり、国内外で菌体自体の病原性に大きな差があるのではないかとも推測されています。
そして、数字だけをみましても、日本人の胃がん発症に関して、ピロリ菌保有は準必要条件に相当しますが、いわば十分条件ではないわけですので、とどのつまり、要するに胃がんの家族内発症は遺伝で決まっているのではなく、環境要因ということなのです。
尤も、胃がんに限らず、悪性腫瘍発症に負の貢献をしているのは遺伝子ではなく、9割以上が環境因子であると長年に渡る研究から提唱されています。遺伝子は発症の仕組み、メカニズムを説明しうるのですが、問題は発症要因の方です。

そして、ここで重要なのは環境要因が悪性腫瘍発病の原因ならば、中には工夫・努力で予防出来る場合もある、ありうるということです。
遺伝子や先天的体質のように努力で克服しがたいもの、あるいは、困難なものというわけでは必ずしもないのです。
 
そこで話を戻しますが、
以前のピロリ菌感染様式としては、幼小児期に、生活用水を井戸水やポンプで汲み上げた地下水に依存していた方がその時に感染して持続感染による胃粘膜荒廃をきたし引いては胃がん発現に至るという構図でした。
しかしながら、最近は上水道のみならず下水道も完備した環境で生活している方がほとんどですので、ピロリ菌の新規感染比率は激減しているのですが、それでも実は、「0」には成っておりません。数%の比率で若年者にもピロリ菌保有者を認めます。
それは何故か。親や周囲の人間からもらうことが有るのです。知らないうちに唾液を介して伝染していると云われています。咀嚼して子供に食事を与えたり、熱い食事でやけどをしないようにと熱冷ましでふうふう口で吹いてから食事を与える。そういったことを介して伝染するのではないかと推測されています。現代は、ピロリ菌の伝染様式も時代とともに変化していると云われています。

ピロリ菌除菌専門外来の医師の話では「だからこそ、除菌をしてほしい。孫や子供にうつしたくないので。うつす前に治したい。」という方も稀にいらっしゃるそうです。
確かに、今までの研究上、「持続」感染をきたすのは、幼少期に感染した場合のみのようです。ではなぜ、幼小児期のみに感染時期が限定されるのか、ということなのですが、
実は、消化液成分の一つである胃酸には、食物に含まれる細菌を死滅させる働きも併せ持っており、食物や水分を介した細菌侵入を阻止する強い働きがあるのです。
幼い時期は、胃の細胞も未成熟のため、胃酸が細菌を死滅させるほどには分泌されません。

ピロリ菌の話ではありませんが、先日病原性大腸菌O157に集団感染した方の内、3歳の女児が不幸にして亡くなられた事象が有りますが、大人は胃酸で病原体の菌数を激減させることできるのですが、女児は免疫能力自体も未成熟な上、胃酸による消毒機能も低いままであったことが、他の成人と明暗を分けた要因なのかもしれません。


尚、大人の場合、成人してから感染はしないのか?と尋ねられる場合があります。

感染はするにはするのですが、急性胃粘膜病変、急性十二指腸病変と呼ばれる高度な急性胃炎等をきたすことがあります。ただし、この場合は炎症をきたす期間が極めて限定的で、ほぼ殆ど大半は自然に治ってしまうと云われています。
この場合には胃がんの発症にはつながらないと云われています。

以上、ピロリ菌について思いつくままに周辺情報を記載させて頂きましたが、ご参考にして頂ければ幸いです。

ピロリ菌について

2017年07月01日

 
 
 
 
 
今回のミニコラムでは、ピロリ菌について書いてみましょう。

当施設では、胃カメラ検査をほぼ毎日7~8件のペースで行っています。

胃ポリープや逆流性食道炎、胃潰瘍、十二指腸潰瘍、そして胃がんが診断できます。中には、胃の中を覗いてみたら、胃の粘膜がかなりただれていて、まずピロリ菌がいるだろうと推定できる方が少なからずおります。

ご存知のように、ピロリ菌保有を放置しますと、潰瘍のみならず、のちのち胃がんにもなりやすくなりますので、菌の駆除を基本、お勧めしています。

しかしながら、画像所見はあくまでも状況証拠に過ぎませんので、正確な診断をして除菌をお勧めするためには確定証拠が必要です。その際、当施設では、少ない手間暇とコストの利点を考慮して、ピロリ菌IgG血清抗体価、血液検査をお勧めしています。
後日届いた検査結果がピロリ菌陽性であれば、当院では外来診療を行っておりませんため、除菌療法を依頼する胃腸科(消化器内科)宛てのお手紙を記載し健診結果票に添えお届けしています。

除菌の手順は、標準法で抗生物質2種類と胃酸分泌抑制剤を朝夕食後の一日2回、一週間の内服にて行います。殆どの方は経過順調に運ぶ除菌治療ですが、経過中に抗生物質の影響で偶に下痢をしたり、お腹がやんだりする方がおります。但し、強い副作用=高熱、強い腹痛、血便等、が出ない限りはなるべく、最後の7日目まで内服を続けることが大事なポイントです。
これは、ピロリ菌に抗生剤耐性を獲得させないためなのですが、発現した症状がもし強ければ、無理はせずに、まず内服を中止して病院で治療を受けるべきでしょう。

次に除菌療法の成功率は概ね7~8割前後ですので、治療後必ず成否判定を受けることがとても大事です。成功しなかった場合、二回目まで保険診療が可能です。尚。除菌成功率を少しでも向上させるために、除菌療法前には禁煙をすべきです。

最低限でも除菌中の1週間だけでも禁煙しておくべきと提唱されています。そして、除菌が成功した場合でも、胃がんになる確率は減少しても、ゼロには成り切りませんので次の2つの原則を順守することが求められています。

1)やはり、禁煙(受動喫煙も含めましょう)
2)塩分制限(食事の味付けは塩味を薄くしましょう。)

以上、類似するピロリ菌関連のホームページは他にも多数ありますので、この記事では大まかに要点のみを記載しましたが、皆様の健康管理、理解に役立てて頂ければ幸いと存じます。

栃原

乳腺エコーとマンモグラフィの違いとは

2017年06月16日

* * *  乳腺エコーとマンモグラフィの特徴  * * *
乳腺エコー マンモグラフィ
メカニズム  人間の耳には感知しない周波数の高い音を身体にあてその反射波を利用して病変を見ます。 X線を利用しレントゲン撮影します。
(東京からニューヨークへ飛行機で行く時と同程度の被ばくを伴います。)
方法
痛みの有無
 乳房に専用のジェルを塗って、プローブという機械を当て検査するので痛みはありません。  乳房を薄く広げて板で挟むので若干の痛みを伴います。
(痛みの感じ方は個人差があります。)
検査
制限
 妊娠中でも授乳中でも検査制限ありません。
豊胸、ペースメーカーの方も検査可能。
 授乳中は検査の痛みが増し、病変の判別もしにくいので、お勧めしていません。
豊胸術後、妊娠中、妊娠の可能性がある方は当院では撮影をお断りしています。
特長  小腫瘤(5mm以下)を見つけるのが得意。  石灰化*1、しこりを触れることができないガンを見つけるのが得意。
検査
対象者
 特に、40歳未満の乳腺の豊富な乳房に対して病変検出率が高い。  特に、50代以降の、乳腺が脂肪に置き換わった乳房に対して病変検出率が高い。

 

*1石灰化とは乳管の中にカルシウムが沈着することで起きる変化のこと。
がん細胞は、増殖するとともに一部は死滅し、その部分に石灰化が沈着します。
このため、石灰化はガンを疑うサインとなりますが、乳腺症など良性の乳腺の病気でもみられるため、石灰化が全て乳がんの兆候というわけではありません。
札幌フィットネスセンター 札幌フジクリニック 放射線課 

 

『胃カメラと胃バリウム検査』

2017年06月16日

近年、健診受診者からの「人間ドック受診の際、胃カメラを同時(一緒)に受けたい」という要望=検査需要が着実に増加しています。

日本全国レベルで経鼻内視鏡(鼻から挿入する胃カメラ)検査が普及しつつあることに伴い、「従来の胃カメラ(口から挿入する胃カメラ)に比べて、身体的負担が少なくなり受けやすい検査になった」というイメージが一般の方たちに浸透してきた結果かとわたくしは推測しています。

確かに、経鼻法による胃カメラでとても楽に毎年検査を受けていますという感想やご意見をお聞きすることが幾度もあり、とても嬉しく思っておりますが、しかしながら、当施設においては複数の検査機器と放射線技師で対応が可能なバリウム検査とは異なり、前処置にかかる時間や一台の検査機器と医師一人で実施することになる胃カメラの検査数にはそもそも限りがあり、受診者の皆様からのご要望すべてにお答えできない状況が残念ながら、長らく続いております。

率直なところ、こうした胃カメラ供給と需要のアンバランスは札幌市内の健診機関いずれもがかかえる課題の一つのようです。内視鏡医師増員や機器整備については、なかなか難しい事柄のためすぐには解消できないものと推察しています。

但し、胃カメラを担当している医師として、受診者の方たちに直接、結果説明をしておりますと、「多少、苦しくとも、直接、胃の中を観察できる胃カメラの方が検査精度はバリウム検査にはるかに勝っている」はずであると(「だから胃カメラを受けるんだ」と)思い込まれている方が、案外多い印象を持っております。

では、胃バリウム検査は、はたして、胃カメラに劣るのでしょうか。

実は、消化器内科医師の観点からしますと、胃カメラと胃バリウム検査とは、実はどちらが他方に勝っているという訳では必ずしもなく、本来、それらは相互に相補う検査方法と見なすべきと考えています。
実物の局所を分析できる胃カメラと、胃全体をレントゲンのかげ、陰影として総合評価できる胃バリウムとは相互補完されるべき検査どうしであり、両方実施して胃の全体像が概ね把握できるものと考えています。

概ねと記載した理由は、もちろんながら疑われる病変の種類によっては、腹部CT検査、MRI検査、超音波内視鏡検査、腹部エコー検査を追加し組み合わせて胃の病変を精密に評価することがあるためです。

つまり、胃カメラや胃バリウムのみで胃の状態すべてを把握できるというわけではありませんが、病変の有無と胃の病態概略の把握にはその二つで概ね間に合うという意味合いです。

少しここで話を切り替えます。2つの主たる胃の検査について比較してみましょう。

胃バリウム検査が胃カメラに勝る要素についてですが、全体像を観察できる強みがあります。

胃カメラは局所の観察と分析にたけているのですが、人が観察する手順を取る以上、主観が判断を大きく左右することが有ります。検査中に異常所見に検査医が気づいていないと、存在しないものと同然とになってしまいますのが、胃カメラです。

バリウム検査では、通常の手順で撮影すれば、取りこぼしは最低限に抑えることができます。

しかしながら、微細な所見の存在にそもそも気づかないと見落とされやすいのが、胃カメラの弱点です。死角も胃の形によっては、少なからずある方もおりますし、(胃と食道のつなぎ目が加齢現象等でゆるくなり)「げっぷ」を頻回にしやすい方では、胃の内腔を充分に拡張させることができず、観察がやむなく不十分となる方もおります。

「げっぷ」のみならず、「えずく」と表現される方もおります反射(おえっ、ゲェーゲェーの咽頭反射です)の強い方は、検査自体に無理があり、精度が保障できかねる場合も稀にあります。

バリウムでは、所見があれば、レントゲンでフィルムとして病変の位置、大きさ、範囲、数を客観的に評価できるということがあります。

以前にあった実際のお話ですが、人間ドック医療面接の際、当施設のバリウム検査では、「明らかに中等度の大きさのポリープがあるようですね」と説明をした所、「数か月前に受けた他施設の胃カメラで異常無しと言われていましたが、バリウム検査の方が間違っているのでは?」と率直に言われたため、やむなく受診者の以前のバリウム検査画像も参照し、「ご覧のように今回と同じ場所、同じ大きさ、同じ形でポリープがうつっておりますのでよって、どうも胃カメラでは見落とされたと考えるべきでしょうね」とお詫びをしつつお話をしたことが幾度も有ります。

それでも余り、納得されずに胃カメラの方が圧倒的に精度は上だ、上のはずだという表情をされていた方も中におりました。しかしながら、これが胃カメラの現状、実状です。

つまり、胃カメラは取り分け、術者の技量と経験によって検査の精度が概ね決まるという様な要素が有ります。端的に表現しますと受ける側の覚悟と我慢、反射の程度と検査医のうでで決まるのです。

経鼻胃カメラでも反射が非常に強く、通常の丁寧な観察ができない受診者の方も散見しております。(これだけ、反射が強いのであれば、むしろバリウムで検査して頂いた方が身体的負担は少ないのではないかと思わずにはいられない方もいらっしゃいます。)

さらには、取り分け、性質(たち)の悪い胃がんの代表でありますスキルス胃がんについてですが、このがんの場合、がん細胞が粘膜の下をもぐって拡がっていく性質を有するがんなので、内視鏡で観察しても表面に顔を出していないことが多いため、検出(診断)が困難なことが多く、とかく見落とされやすいとされています。

具体例としては、芸能人の逸見政孝さんは胃がんを恐れ、毎年胃カメラをこまめに受けていたのにかかわらず、たまたま罹患したがんが胃がんで、それも運悪くカメラでは取り分け分かりにくいスキルス胃がんに罹患していたため、診断も治療も遅れ、1993年に亡くなられたという話は有名です。

とは言うものの、胃カメラがバリウム検査に勝っている要素は、確かに存在します。

レントゲン被ばくはないこと、検査後にトイレに幾度も通う必要がないこと、あやしいところがあれば、即座にその場で細胞を一部つまみ顕微鏡判定に提出ができること(一連の検査を一度で済ませることができ、手間暇が少なくて済むという意味です)、そして、頑固な便秘症の方、以前腸閉塞症をされたことのある方でも、比較的安心して受けることができることなどがあげられると思います。

バリウムを受けるといつもバリウムが出尽くすまでにひどくおなかがやんで困るんですという体質の方は最初から胃カメラを選択してもそれはやむを得ないことと思います。

しかし、そういうケースなどを除けば、医師の目から見ますと、
胃カメラが毎年必要ですので来年も・・、という方は案外少なく、バリウム検査でも足りるはずですが・・、という方も相当数いらっしゃいます。

ですから今一度、バリウム検査の良いところを見直して頂きまして、ご自分の不安、バリウムの負担と胃カメラの混み具合等々を天秤にかけてご検討を頂ければ幸いと存じます。たとえば、具体的には胃カメラと胃バリウム検査を隔年で交互に受けて頂いてもよろしいのではないかと思います。

小さな胃ポリープでは毎年の胃カメラは必要ではありませんが、バリウムを2年連続で受けて3年目に胃カメラという周期での検査、組み合わせでも良い方も相当数いらっしゃるのではないかと思われます。

確かに、医学統計的に、胃がんによる死亡頻度は現状で減ってきています。しかしながら胃がんの発生頻度は、日本全体の少子高齢化現象にて、実数上、さほど減っていないと報告されています。胃の検査の必要性は低下していませんし、ABC検診の普及とともにピロリ菌診断と、除菌療法という話題も最近聞く機会がとみに増えてきています。よって、その点を含めてみても人気の度合いで胃カメラにバリウムは負けていますが、今一度、バリウム検査の良い点、素晴らしい点もご一考いただければ、幸いと存じます。

2016.01.14    院長 栃原 正博