ピロリ菌(第2弾)について

2017年10月13日

 
 
 
 
 

前回の医学コラムでは、ピロリ菌について簡単な解説をさせて頂きましたが、
今回も、ピロリ菌(第2弾)について触れさせて頂きます。

健診検査の一環として、私は胃カメラを定期的に担当しているのですが、
その胃カメラを受けられた直後の受診者の方たちに
「検査結果を説明致しますが、(画像提示後)・・ご安心ください。異常所見は有りませんでした。あやしい所見は一切ありませんでしたので、心配ご無用です。」
と説明を致しますと、少なからぬ回数で受診者の側から
「実は父(母)が胃がんで手術を過去に受けましたので、それで今日、私も胃カメラ
を(・・覚悟を決めて・・)初めて受けたのです。でも、とても安心しました。」
という風に返答をされる方が案外いらっしゃいます。両親と同じ体質、遺伝子を持っているので心配でした、という意味が隠れていると思われるわけです。
 
 
しかしながら 皆さんも御存知のように、胃がん発症に大きく関与している要因は
いわゆるヘリコバクター・ピロリという細菌です。

 
幼少期に感染した後、胃粘膜内に定着・繁殖し、その後長年の持続感染を介して胃がん発症へとつながると云われています。この際の胃がん発現については、罹病する宿主側の遺伝子は左程関係はなく、むしろ病原体株の遺伝子の方が大きく関係しているようです。
 
中には、日本での胃がん発症の主たる要因たるヘリコバクター・ピロリという細菌の寄与度は98-99%近いとの報告もありますが、一方で諸外国ではその寄与比率は7割前後であるとも統計が報告されています。つまり、国内外で菌体自体の病原性に大きな差があるのではないかとも推測されています。
そして、数字だけをみましても、日本人の胃がん発症に関して、ピロリ菌保有は準必要条件に相当しますが、いわば十分条件ではないわけですので、とどのつまり、要するに胃がんの家族内発症は遺伝で決まっているのではなく、環境要因ということなのです。
尤も、胃がんに限らず、悪性腫瘍発症に負の貢献をしているのは遺伝子ではなく、9割以上が環境因子であると長年に渡る研究から提唱されています。遺伝子は発症の仕組み、メカニズムを説明しうるのですが、問題は発症要因の方です。

そして、ここで重要なのは環境要因が悪性腫瘍発病の原因ならば、中には工夫・努力で予防出来る場合もある、ありうるということです。
遺伝子や先天的体質のように努力で克服しがたいもの、あるいは、困難なものというわけでは必ずしもないのです。
 
そこで話を戻しますが、
以前のピロリ菌感染様式としては、幼小児期に、生活用水を井戸水やポンプで汲み上げた地下水に依存していた方がその時に感染して持続感染による胃粘膜荒廃をきたし引いては胃がん発現に至るという構図でした。
しかしながら、最近は上水道のみならず下水道も完備した環境で生活している方がほとんどですので、ピロリ菌の新規感染比率は激減しているのですが、それでも実は、「0」には成っておりません。数%の比率で若年者にもピロリ菌保有者を認めます。
それは何故か。親や周囲の人間からもらうことが有るのです。知らないうちに唾液を介して伝染していると云われています。咀嚼して子供に食事を与えたり、熱い食事でやけどをしないようにと熱冷ましでふうふう口で吹いてから食事を与える。そういったことを介して伝染するのではないかと推測されています。現代は、ピロリ菌の伝染様式も時代とともに変化していると云われています。

ピロリ菌除菌専門外来の医師の話では「だからこそ、除菌をしてほしい。孫や子供にうつしたくないので。うつす前に治したい。」という方も稀にいらっしゃるそうです。
確かに、今までの研究上、「持続」感染をきたすのは、幼少期に感染した場合のみのようです。ではなぜ、幼小児期のみに感染時期が限定されるのか、ということなのですが、
実は、消化液成分の一つである胃酸には、食物に含まれる細菌を死滅させる働きも併せ持っており、食物や水分を介した細菌侵入を阻止する強い働きがあるのです。
幼い時期は、胃の細胞も未成熟のため、胃酸が細菌を死滅させるほどには分泌されません。

ピロリ菌の話ではありませんが、先日病原性大腸菌O157に集団感染した方の内、3歳の女児が不幸にして亡くなられた事象が有りますが、大人は胃酸で病原体の菌数を激減させることできるのですが、女児は免疫能力自体も未成熟な上、胃酸による消毒機能も低いままであったことが、他の成人と明暗を分けた要因なのかもしれません。


尚、大人の場合、成人してから感染はしないのか?と尋ねられる場合があります。

感染はするにはするのですが、急性胃粘膜病変、急性十二指腸病変と呼ばれる高度な急性胃炎等をきたすことがあります。ただし、この場合は炎症をきたす期間が極めて限定的で、ほぼ殆ど大半は自然に治ってしまうと云われています。
この場合には胃がんの発症にはつながらないと云われています。

以上、ピロリ菌について思いつくままに周辺情報を記載させて頂きましたが、ご参考にして頂ければ幸いです。

ピロリ菌について

2017年07月01日

 
 
 
 
 
今回のミニコラムでは、ピロリ菌について書いてみましょう。

当施設では、胃カメラ検査をほぼ毎日7~8件のペースで行っています。

胃ポリープや逆流性食道炎、胃潰瘍、十二指腸潰瘍、そして胃がんが診断できます。中には、胃の中を覗いてみたら、胃の粘膜がかなりただれていて、まずピロリ菌がいるだろうと推定できる方が少なからずおります。

ご存知のように、ピロリ菌保有を放置しますと、潰瘍のみならず、のちのち胃がんにもなりやすくなりますので、菌の駆除を基本、お勧めしています。

しかしながら、画像所見はあくまでも状況証拠に過ぎませんので、正確な診断をして除菌をお勧めするためには確定証拠が必要です。その際、当施設では、少ない手間暇とコストの利点を考慮して、ピロリ菌IgG血清抗体価、血液検査をお勧めしています。
後日届いた検査結果がピロリ菌陽性であれば、当院では外来診療を行っておりませんため、除菌療法を依頼する胃腸科(消化器内科)宛てのお手紙を記載し健診結果票に添えお届けしています。

除菌の手順は、標準法で抗生物質2種類と胃酸分泌抑制剤を朝夕食後の一日2回、一週間の内服にて行います。殆どの方は経過順調に運ぶ除菌治療ですが、経過中に抗生物質の影響で偶に下痢をしたり、お腹がやんだりする方がおります。但し、強い副作用=高熱、強い腹痛、血便等、が出ない限りはなるべく、最後の7日目まで内服を続けることが大事なポイントです。
これは、ピロリ菌に抗生剤耐性を獲得させないためなのですが、発現した症状がもし強ければ、無理はせずに、まず内服を中止して病院で治療を受けるべきでしょう。

次に除菌療法の成功率は概ね7~8割前後ですので、治療後必ず成否判定を受けることがとても大事です。成功しなかった場合、二回目まで保険診療が可能です。尚。除菌成功率を少しでも向上させるために、除菌療法前には禁煙をすべきです。

最低限でも除菌中の1週間だけでも禁煙しておくべきと提唱されています。そして、除菌が成功した場合でも、胃がんになる確率は減少しても、ゼロには成り切りませんので次の2つの原則を順守することが求められています。

1)やはり、禁煙(受動喫煙も含めましょう)
2)塩分制限(食事の味付けは塩味を薄くしましょう。)

以上、類似するピロリ菌関連のホームページは他にも多数ありますので、この記事では大まかに要点のみを記載しましたが、皆様の健康管理、理解に役立てて頂ければ幸いと存じます。

栃原

乳腺エコーとマンモグラフィの違いとは

2017年06月16日

* * *  乳腺エコーとマンモグラフィの特徴  * * *
乳腺エコー マンモグラフィ
メカニズム  人間の耳には感知しない周波数の高い音を身体にあてその反射波を利用して病変を見ます。 X線を利用しレントゲン撮影します。
(東京からニューヨークへ飛行機で行く時と同程度の被ばくを伴います。)
方法
痛みの有無
 乳房に専用のジェルを塗って、プローブという機械を当て検査するので痛みはありません。  乳房を薄く広げて板で挟むので若干の痛みを伴います。
(痛みの感じ方は個人差があります。)
検査
制限
 妊娠中でも授乳中でも検査制限ありません。
豊胸、ペースメーカーの方も検査可能。
 授乳中は検査の痛みが増し、病変の判別もしにくいので、お勧めしていません。
豊胸術後、妊娠中、妊娠の可能性がある方は当院では撮影をお断りしています。
特長  小腫瘤(5mm以下)を見つけるのが得意。  石灰化*1、しこりを触れることができないガンを見つけるのが得意。
検査
対象者
 特に、40歳未満の乳腺の豊富な乳房に対して病変検出率が高い。  特に、50代以降の、乳腺が脂肪に置き換わった乳房に対して病変検出率が高い。

 

*1石灰化とは乳管の中にカルシウムが沈着することで起きる変化のこと。
がん細胞は、増殖するとともに一部は死滅し、その部分に石灰化が沈着します。
このため、石灰化はガンを疑うサインとなりますが、乳腺症など良性の乳腺の病気でもみられるため、石灰化が全て乳がんの兆候というわけではありません。
札幌フィットネスセンター 札幌フジクリニック 放射線課 

 

『胃カメラと胃バリウム検査』

2017年06月16日

近年、健診受診者からの「人間ドック受診の際、胃カメラを同時(一緒)に受けたい」という要望=検査需要が着実に増加しています。

日本全国レベルで経鼻内視鏡(鼻から挿入する胃カメラ)検査が普及しつつあることに伴い、「従来の胃カメラ(口から挿入する胃カメラ)に比べて、身体的負担が少なくなり受けやすい検査になった」というイメージが一般の方たちに浸透してきた結果かとわたくしは推測しています。

確かに、経鼻法による胃カメラでとても楽に毎年検査を受けていますという感想やご意見をお聞きすることが幾度もあり、とても嬉しく思っておりますが、しかしながら、当施設においては複数の検査機器と放射線技師で対応が可能なバリウム検査とは異なり、前処置にかかる時間や一台の検査機器と医師一人で実施することになる胃カメラの検査数にはそもそも限りがあり、受診者の皆様からのご要望すべてにお答えできない状況が残念ながら、長らく続いております。

率直なところ、こうした胃カメラ供給と需要のアンバランスは札幌市内の健診機関いずれもがかかえる課題の一つのようです。内視鏡医師増員や機器整備については、なかなか難しい事柄のためすぐには解消できないものと推察しています。

但し、胃カメラを担当している医師として、受診者の方たちに直接、結果説明をしておりますと、「多少、苦しくとも、直接、胃の中を観察できる胃カメラの方が検査精度はバリウム検査にはるかに勝っている」はずであると(「だから胃カメラを受けるんだ」と)思い込まれている方が、案外多い印象を持っております。

では、胃バリウム検査は、はたして、胃カメラに劣るのでしょうか。

実は、消化器内科医師の観点からしますと、胃カメラと胃バリウム検査とは、実はどちらが他方に勝っているという訳では必ずしもなく、本来、それらは相互に相補う検査方法と見なすべきと考えています。
実物の局所を分析できる胃カメラと、胃全体をレントゲンのかげ、陰影として総合評価できる胃バリウムとは相互補完されるべき検査どうしであり、両方実施して胃の全体像が概ね把握できるものと考えています。

概ねと記載した理由は、もちろんながら疑われる病変の種類によっては、腹部CT検査、MRI検査、超音波内視鏡検査、腹部エコー検査を追加し組み合わせて胃の病変を精密に評価することがあるためです。

つまり、胃カメラや胃バリウムのみで胃の状態すべてを把握できるというわけではありませんが、病変の有無と胃の病態概略の把握にはその二つで概ね間に合うという意味合いです。

少しここで話を切り替えます。2つの主たる胃の検査について比較してみましょう。

胃バリウム検査が胃カメラに勝る要素についてですが、全体像を観察できる強みがあります。

胃カメラは局所の観察と分析にたけているのですが、人が観察する手順を取る以上、主観が判断を大きく左右することが有ります。検査中に異常所見に検査医が気づいていないと、存在しないものと同然とになってしまいますのが、胃カメラです。

バリウム検査では、通常の手順で撮影すれば、取りこぼしは最低限に抑えることができます。

しかしながら、微細な所見の存在にそもそも気づかないと見落とされやすいのが、胃カメラの弱点です。死角も胃の形によっては、少なからずある方もおりますし、(胃と食道のつなぎ目が加齢現象等でゆるくなり)「げっぷ」を頻回にしやすい方では、胃の内腔を充分に拡張させることができず、観察がやむなく不十分となる方もおります。

「げっぷ」のみならず、「えずく」と表現される方もおります反射(おえっ、ゲェーゲェーの咽頭反射です)の強い方は、検査自体に無理があり、精度が保障できかねる場合も稀にあります。

バリウムでは、所見があれば、レントゲンでフィルムとして病変の位置、大きさ、範囲、数を客観的に評価できるということがあります。

以前にあった実際のお話ですが、人間ドック医療面接の際、当施設のバリウム検査では、「明らかに中等度の大きさのポリープがあるようですね」と説明をした所、「数か月前に受けた他施設の胃カメラで異常無しと言われていましたが、バリウム検査の方が間違っているのでは?」と率直に言われたため、やむなく受診者の以前のバリウム検査画像も参照し、「ご覧のように今回と同じ場所、同じ大きさ、同じ形でポリープがうつっておりますのでよって、どうも胃カメラでは見落とされたと考えるべきでしょうね」とお詫びをしつつお話をしたことが幾度も有ります。

それでも余り、納得されずに胃カメラの方が圧倒的に精度は上だ、上のはずだという表情をされていた方も中におりました。しかしながら、これが胃カメラの現状、実状です。

つまり、胃カメラは取り分け、術者の技量と経験によって検査の精度が概ね決まるという様な要素が有ります。端的に表現しますと受ける側の覚悟と我慢、反射の程度と検査医のうでで決まるのです。

経鼻胃カメラでも反射が非常に強く、通常の丁寧な観察ができない受診者の方も散見しております。(これだけ、反射が強いのであれば、むしろバリウムで検査して頂いた方が身体的負担は少ないのではないかと思わずにはいられない方もいらっしゃいます。)

さらには、取り分け、性質(たち)の悪い胃がんの代表でありますスキルス胃がんについてですが、このがんの場合、がん細胞が粘膜の下をもぐって拡がっていく性質を有するがんなので、内視鏡で観察しても表面に顔を出していないことが多いため、検出(診断)が困難なことが多く、とかく見落とされやすいとされています。

具体例としては、芸能人の逸見政孝さんは胃がんを恐れ、毎年胃カメラをこまめに受けていたのにかかわらず、たまたま罹患したがんが胃がんで、それも運悪くカメラでは取り分け分かりにくいスキルス胃がんに罹患していたため、診断も治療も遅れ、1993年に亡くなられたという話は有名です。

とは言うものの、胃カメラがバリウム検査に勝っている要素は、確かに存在します。

レントゲン被ばくはないこと、検査後にトイレに幾度も通う必要がないこと、あやしいところがあれば、即座にその場で細胞を一部つまみ顕微鏡判定に提出ができること(一連の検査を一度で済ませることができ、手間暇が少なくて済むという意味です)、そして、頑固な便秘症の方、以前腸閉塞症をされたことのある方でも、比較的安心して受けることができることなどがあげられると思います。

バリウムを受けるといつもバリウムが出尽くすまでにひどくおなかがやんで困るんですという体質の方は最初から胃カメラを選択してもそれはやむを得ないことと思います。

しかし、そういうケースなどを除けば、医師の目から見ますと、
胃カメラが毎年必要ですので来年も・・、という方は案外少なく、バリウム検査でも足りるはずですが・・、という方も相当数いらっしゃいます。

ですから今一度、バリウム検査の良いところを見直して頂きまして、ご自分の不安、バリウムの負担と胃カメラの混み具合等々を天秤にかけてご検討を頂ければ幸いと存じます。たとえば、具体的には胃カメラと胃バリウム検査を隔年で交互に受けて頂いてもよろしいのではないかと思います。

小さな胃ポリープでは毎年の胃カメラは必要ではありませんが、バリウムを2年連続で受けて3年目に胃カメラという周期での検査、組み合わせでも良い方も相当数いらっしゃるのではないかと思われます。

確かに、医学統計的に、胃がんによる死亡頻度は現状で減ってきています。しかしながら胃がんの発生頻度は、日本全体の少子高齢化現象にて、実数上、さほど減っていないと報告されています。胃の検査の必要性は低下していませんし、ABC検診の普及とともにピロリ菌診断と、除菌療法という話題も最近聞く機会がとみに増えてきています。よって、その点を含めてみても人気の度合いで胃カメラにバリウムは負けていますが、今一度、バリウム検査の良い点、素晴らしい点もご一考いただければ、幸いと存じます。

2016.01.14    院長 栃原 正博