血液検査について -採血-

2018年04月25日

今回は採血についてお話を致します。
痛い針を皮膚に挿して血液を採る、あの採血です。

採血については、それを受ける側として、余り得意ではない方、本当は嫌で受けたくはないという方が大勢いらっしゃると思いますが、健康診査のみならず、医療全般につき、採血=血液検査はかなめの検査法です。

現代医療において主要たる検査手法の双璧を成すものが一つには近年特に進化著しい画像検査(胸部X線検査、胃バリウム検査、腹部超音波検査、胃カメラ、眼底検査)であり、そして、もう一つが血液検査です。
 ご存知のように血液を調べることによって体内にて現在進行中の様々な生理現象なり病態生理(病状)なりが正確に、且つ、高い再現性を以て、定量、評価、診断できます。

調べられる具体的項目としては、栄養状態、塩分バランス、貧血の有無と程度、炎症反応、肝臓や腎臓等の内臓機能、各種ホルモンの値、などなどですが、その他にも沢山測定可能な項目がまだまだあります。
 確かに、日進月歩、日々着々と、多方面に渡って医学研究は進んでいるのですが、しかし残念ながら未だに、尿や便、唾液で血液の代用を任せられるというところまでは進んでいないようです。
 つまり多少とも痛い思いをしないことには、体内の病態生理を調べることはいまだに難しいようです。但し、皆さんが苦手な採血であっても必ずしも脅かすわけではありませんが、病院でのあまたある検査中ではまだしも負担、苦痛、苦悩の少ない方の検査に分類されると個人的には思われます。
 確かに採血検査は一応ながらも、侵襲性検査に大別、分類されてはいますが、身体的負担という点ではかなり低い方と思れています。実際に、もっともっと大変な苦しい検査や痛い処置が病院には沢山あります。

しかしながら、皆さんはやはり何と云っても、針刺しの痛みを忌避される方が多いようです。

採血担当者も、被採血者への負担を軽減できるよう、一度で、短時間の針刺しで済むように、刺しやすい血管(静脈)をこまめに捜したり、難しい方の場合には、局所を熱い蒸しタオルで温めたりして丁寧に準備をいたします。
 でもなかなか、深い皮膚脂肪、皮下脂肪に血管が完全に埋もれていて見えにくい、刺しにくいという方も結構いらっしゃいます。では、頑張って痩せたら、血管が見えやすくなるかというと私の狭い観察経験上はどうもそうでもないようです。

それと、太い針をさせば血液の流入速度も速くなるので針を刺している時間が短くなるのですが、でも太いなりにそれなりの刺入感はあります。細い針をさせば刺入時、針を刺したときの痛みが若干、わずかながら少ないのですが、血液流入時間=針を刺している時間はそれ相応に長めになる訳です。
 針をさす、その針の太さも痛みと関連していますし針の直径と針を指している時間とも逆相関があるからです。
 但し、200ml、400ml程の血液量を引き出すための献血用針や、人工透析で尿毒素を体からこし取る時に用いる針は、採血用の針の幾倍もの太さがあります。この理由は溶血現象等を予防するためですが、ですから医療を実施している側から見ますと常日頃用いている検診用の採血針は、誤解を恐れずに言えばとても細いほうで、かわいい太さです。(注:溶血現象とは、赤血球等の細胞成分が採血の際に血液にかかる陰圧・陽圧によって細胞が崩壊し、細胞内液が血液、血清や血漿に混入して正確な測定値が得られなく成ることです。)

それと、偶に聞かれる内容ですが、採血量は検査メニューしだいなので一概には表現しがたいのですが、概ね15~30ml前後です。全身の血液量はおおむね、50kg体重の方でおおよそ3.8リットルありますので、その程度の採血量で、貧血になることは全くありません。

但し、脳貧血の方はありえます。(一般の方は貧血と脳貧血を区別しないで、「ごちゃまぜ」にして使っている方が多い印象です。)
 体内で循環する血液中色素量が不足して疲れやすく息切れしやすくなるのが貧血であり、意識が短時間遠のく感じがしたり、あるいは意識が消失することが、いわゆる脳貧血です。諸々の要因にて一時的に脳血流量が乏しくなって正常な脳機能が維持できなくなる症状、病態が脳貧血です。

そこで追加説明しますが、それ程高頻度ではないのですが、採血の少し後に体調不良に成る方が経験上100人中2~3人概ねいらっしゃいます。そうした病態の発生要因は迷走神経反射という仕組みで起きるのですが、気が遠くなったり(ブラックアウト等)、短時間意識を失ったりしますし程度の強い方ですと短時間=数分間の間に数回、全身性痙攣発作を繰り返す方もいます。意識がないのにも関わらず全身を大きく波打ってびくびくと動かすことです。

ちょっと脅かしすぎたかも知れませんが、施設では年間に3.5~4万件前後採血をしていますが、けいれんまで起こす方は年間に1件あるかないかと云ったところでしょうか。
 稀な症状であるけいれんは別として、意識消失、その意識を失うという症状についても表現形態には個人差が相当あり多様なのですが、採血している最中に意識を失い失神する方もおれば、1~2分間、あるいは3~4分経過してから失神する方もおります。

ただ、一回でもそうした採血後(中)の失神発作が起きた方はその後も繰り返すことが多く転倒事故を起こしやすいものですから、採血後受診者の方には基本、安静にして頂くようにルールを決めているのはどこの健診機関もほぼ同様のことでしょう。それらは手間がかかるにせよ、意識消失による事故、トラブルを起こさないための配慮なり対処なのです。

取り分け、採血後に失神を繰り返しやすい方は、あらかじめベッド上に寝てもらって準備をしてから、採血を仰向けで受けて頂きしばらく安静に臥床して頂くという手順を取って対処しているのも同様の理由です。転倒した所、先に偶々何か障害物があると怪我をされる場合があります。意識がないまま倒れると回避も受け身も全くとれないからです。

ですから、当施設を「新規」に受診される方の中で
以前、採血後体調不良の経験があった場合には必ず担当者にその旨、自己申告をお願い致します。

 

そのような皆様からの情報提供なり、協力、そして施設側からの小さな配慮にて、より安全安心な健康診査を受診者の方達へ提供できるものとわたくしは考えております。